8年越しの会社売却支援ストーリー
オーナー社長様との出会いから8年以上、
とあるサービス業の会社の売却をご支援し、
成約に至ったエピソードです。

売主様(対象会社の個人100%株主)と出会ったのは、2015年のことでした。
なお対象会社は、とあるサービス業を営まれている会社です。
もっともその時売主様は、弊社(株式会社しのびうむ)のお客様であったわけではありません。
当時、他の会社が売主様から会社を買う方向で話を進めており、その際弊社がデューデリジェンス(※1)を依頼されたご縁で、すなわち売主様の会社を調査する立場で、売主様にお目にかかったのです。
(※1)買収監査とも言われ、買収しようとする対象会社を財務面や法務面から、公認会計士や弁護士等が詳しく調査する手続きを指します。
デューデリジェンス自体は順調に進み、いよいよ他の会社が買収できる状態になったのですが、大変残念なことに、他の会社の業績が悪化し、買収のための資金の捻出や新規調達ができなくなったことで、その際の買収はとん挫することになりました。
売主様のことはずっと気になっていました。
想定外の事情で会社の売却は実現しなかったものの事業はしっかりされていましたし、営まれている事業の性質上、規模を追及することにメリットがある会社様であったことから、より大きな会社様との資本提携は引き続き模索されているはずだと思っていたからです。
それでもWebサイトその他の情報を見る限り、そのような動きがみられなかったため、
何年か後に連絡をとり、ご状況を伺ったのです。
売主様としてもやはり、会社を存続させ、従業員の皆様に安心して働いてもらうには、規模を追及することが不可欠とのお考えでした。
より大きな会社様との提携をするか、あるいは逆に他の会社を複数買収していくことで規模を拡大していくか、いずれかが必要とのお考えでした。
しかし、後者の「他の会社を複数買収していくこと」については、M&Aの仲介会社に当たるなど情報探索に努められたものの、適切な買収対象会社がほとんど見つからず、断念せざるを得ませんでした。
したがって、あらためて会社の売却を検討されることになったのです。
弊社は売却プロセスをご支援することとなり、幾つかの会社を買い手候補として提案した矢先のことでした。
にわかに新型コロナウィルスが猛威を振るい始め、外部環境が大きく変わったことで先行きが見通せなくなり、世の中全体でM&A(会社の買収や売却)といったこと自体がストップしてしまいました。
この環境下で売却を無理に進めても、条件面も含め良いことはないため、一旦、売却活動は中断することとなりました。
新型コロナウィルスが落ち着きを見せてきたころ、東京証券取引所に上場する大手M&A仲介会社の1社から、売主様に連絡がありました。
「貴社を買収したいという会社を多数ご紹介できます!」という触れ込みで、自信満々で営業されたことから、売主様はその仲介会社に売却支援を依頼しました。
「我々が厳選したこの15社に連絡して検討してもらいましょう!」
その大手仲介会社の自信みなぎる様子に、売主様はきっと良い買い手が見つかるのだろうと期待しました。
しばらく経って、その15社から反応がありました。
買収を検討してもよい、という会社は3社。ただし条件面は極めて低い、売主様の満足からは程遠い内容でした。
すると大手仲介会社担当者は、
「我々には膨大なお付き合い先企業がありますから、あと100社に打診できます!」などと言ってきたといいます。
売主様はいよいよ不安になってきました。
匿名の形とはいえ、それだけ多くの会社に情報をばらまかれて良いものなのか?
大体、理屈もなく「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」という方式で自社の売却を進めるなどおかしいじゃないかと。
結局、売主様はこの大手仲介会社に「これ以上の支援は不要」と伝えました。
大手仲介会社は断ったものの、売主様として会社の売却はやはり必要とのお考えは変わりませんでした。
その後も時折コミュニケーションを取らせていただいていた弊社に、改めてご相談をいただきました。
もっとも、その際はまだ、大手仲介会社との契約の有効期間が残っていましたから、それが切れたところでスタートを切りましょうと約束しました。
その後無事スタートを切り、売主様から改めて会社の現状を資料と併せて詳しくお聞かせいただきました。
結果として、弊社からは4社に絞って打診することを提案し、売主様のご了解を得ました。
この4社はいずれも、経営戦略の観点から、対象会社を買収する意義が大きいはずと弊社が判断した企業です。
3社は上場会社、1社は非上場会社でした。
業界大手のような特に規模の大きい企業には声をかけないことにしました。
これは、対象会社の業界では、M&Aによる規模拡大はもちろん行われているものの、大手企業から見ると対象会社は規模が小さすぎ、多大な手間と労力を要するM&A/会社買収をしてまで手に入れようとは思わないはずだと推定されたからです。
なお、こうしている間にも、売主様に新興のM&A仲介会社からダイレクトメールが届きました。
「貴社を買収したいと言っている具体的な会社をご紹介できます。」とのこと。
売主様が話だけは聞いてみたところ、何のことはない、業界大手のトップ5社の名前を挙げてきただけとのことでした。
「何の考えもなく知っている会社名を挙げてきただけ。よく恥ずかし気もなくあんなことができるね。やはり貴社にお願いしていてよかった。」
売主様が苦笑しながら仰っていました。
提案した4社のうち、1社からは早々に「当該事業領域はM&Aの対象外です。」ということでお断りがありました。
2社目、3社目からは前向きな反応があり、ぜひ検討したいとの連絡がありました。
4社目は担当者変更等により検討に時間がかかり、いつまでも回答が得られないため、実質的に可能性のない先とみなしました。
2社目と3社目とは秘密保持契約書(NDA)を締結の上で、企業概要書(※2)を提示して検討を進めてもらいました。
それぞれ前向きに検討していただき、条件面も売主様が満足する水準に届いてきました。
最後は売主様が、この2社のうち、より自社との適合性が高くて良いお相手だと判断した1社と基本合意書(※3)を締結し、手続きをさらに進めることになりました。
(※2)会社や事業の内容を詳細に記載した書面
(※3)株式譲渡(売却)の基本的な条件(価格、時期、独占交渉権、その他基本的条件等)を定める書面。通常はこの基本合意書を締結するか、又は意向表明書を買主候補が売主に差し入れることにより、次のプロセス(デューデリジェンス)に進むことになります。
無事基本合意書が締結できたことで、次はデューデリジェンス(上記(※1)ご参照。)を受け入れることになりました。
買主側が選定した会計コンサルティング会社と法律事務所から、調査のための膨大なリストが送られてきます。
その量は、売主様がショックを受けるほどのものでした。
弊社はそれぞれの依頼の趣旨を売主様に説明するとともに、できるかぎり資料の準備や取り纏めを手伝い、またある質問への回答を流用して他の質問への回答も充足するなど、できるだけ手間がかからず進められるようお手伝いしました。
もっとも、会社の売買という取引の性質上、それでも微に入り細を穿つ質問や依頼が多数寄せられ、売主様のご負担は相当だったことは間違いありません。
1か月近くもかかったデューデリジェンスがようやく終わり、いよいよ株式譲渡契約書の締結のための交渉が始まります。
デューデリジェンスの結果を踏まえて、まずは買主側弁護士が株式譲渡契約書のドラフトを作成します。
売主様も法律事務所を雇い、アドバイスをもらいながら文言の調整案を作り、買主側に返していきます。
契約書の内容を調整するためのやり取りは5往復以上、時間もかかり、契約締結日が迫ると深夜や休日の対応も生じましたが、何とか無事合意に至り、株式譲渡契約書締結に至りました。
買主は上場会社であったため、株式譲渡契約書締結日に適時開示がなされました。
一般的にM&Aでは、売主様は役職員に対して、株式譲渡契約を締結するまではすべて秘密にして話を進めます。したがって、これを初めて役職員に伝えるときも、どのような反応が生じるか読み切れず、大変緊張することとなります。
売主様としては、今回の買主のグループに入ることは会社の事業にとっても役職員にとっても、成長につながる良いご縁だという確信がありました。
それでも、役職員が同じように捉えてくれる保証はありません。
本件でも、誰にいつどうやって説明するのが良いか、売主様は大いに悩まれました。
最終的には、まずは幹部の方に個別に説明し、全体会議にて全従業員の方々に説明することとされました。
契約日。買主は上場会社であるため、規則に基づく適時開示が、売主様による社内説明よりも先になされました。
ところがここでトラブルが生じました。適時開示を見た大手証券会社が、対象会社に直接電話をかけてきたのです。
社長(=売主様)は不在でした。
社長宛にかけてきたのですが、不在と伝えてもしつこく電話をかけてきます。
やむなく管理部門の担当者が電話を受けたところ、まだ売主様から聞いていない株式譲渡の話を聞かされるという想定外の事態が生じたのです。
管理部門の担当者は混乱して売主様に電話をかけました。売主様は冷静にことの次第を説明して事なきを得ましたが、適時開示と社内説明のタイミングについては改めて気を付けなければならないと、弊社としても学んだ次第です。
契約締結から約1か月後、株式譲渡が無事実行されました。これをクロージングとも言います。
契約締結後、クロージングまでに、契約に定められた各種の義務を果たし、またクロージングまでに必要となる書面を準備します。
なぜ契約締結日から1か月も間が空くのか、と思われるかもしれませんが、これらの手続きに時間を取られるためです。
計画的に前倒しで進められるよう弊社も支援しますが、多くの場合、結局クロージング直前にバタバタしてしまうものです。
以上のように売主様と出会ってから8年以上経って、途中の浮き沈みがありながらも、ようやく売主様の満足するお相手に、満足する条件で会社を譲渡、承継するお手伝いができたことは、弊社にとっても大変感慨深く、またこの仕事をしている意義を改めて感じる機会となりました。
多くの手間、交渉、それによる精神的・肉体的な疲弊を何とか乗り越えて、株式譲渡を実現された売主様に最大限の敬意を表します。
また、そのプロセスを支え、実現を支援できたことは、弊社にとっても誇りです。
上記のストーリーはご参考になりましたでしょうか。
大切に育ててきた会社や事業の売却は、一度しかできません。
だからこそ、しっかりとご理解を深めていただいたうえで、条件面でも価格面でもご納得いただき、
最大のメリットを得ていただける形で売却を実現していただきたいと考えます。
まずは無料で、ぜひお気軽にご相談ください。
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